猫も杓子も記事を書く

140文字ではかけないことをかこうと思います。

友達の家の匂い

小学校に入る前は団地に住んでいた。現代みたいな高層マンションもなく、4階建ての集合住宅が幾つも密集した、一般的イメージとして想起される団地。今でこそ周辺にはファミレスやらドラッグストアやらなんやらいろんな施設が建っているが当時は野っ原で、また自分と同世代の子供がたくさんいたということもあり遊ぶことには困らなかった。まだDSもゲームボーイアドバンスもなかった頃の話。

その頃に自分は人生で初めて、友達の家に遊びに行くというイベントを経験した。強烈に覚えていることが幾つかあって、一つはその日が月曜日であったということ。通っていた幼稚園がキリスト教のそれだったので、日曜日に礼拝の通園がある代わりに月曜日が休みだった。その友達も同じ幼稚園だったので休みが同じだったのだ。

そしてもう一つは、家にお邪魔した瞬間に鼻腔を突いたあの独特で強烈な匂いだ。自分は初めて嗅いだ匂いであるにもかかわらず、その匂いを即座に「人の家の匂い」とカテゴライズした。その家中に広がる香り、何がわかるわけでもないけど生活感を感じる匂い。

いまでもあの匂いは何だったんだろうと思う。芳香剤や柔軟剤でもない*1、いい匂いでは決してないが不快な匂いではない、言語化できないあの匂いは。

それ以降も、友達の家に限らず、自分の家以外に行くとたいてい「その家のにおい」がするのが面白いなと思っていた。最も興味深いのは「その家のにおい」はその家によって大なり小なり違うのだ。初めての家に上がると必ずと言っていいほど嗅いだことのない「その家のにおい」がする。同じ匂いは一つとしてないのだ。特に社会人になりたての頃は仕事絡みで度々人の家に上がったことがあって、サンプルに触れる機会は多かった。

さらにファブリーズなどの芳香剤ではある程度誤魔化すことはできるかもしれないけど絶対に隠しきれない。その家にその住人が根ざしてきた生活によって定着する匂いだから(おそらく)、やるだけ無駄なのだ。まあマナーの一種だよなとは思う。

ちょっとずれるがコンビニに入ったときのなんとなく化学物質っぽさを感じる匂いもあれはあれで興味深い。多分エアコンか何かから発せられる匂いなのだろうけど、あれの面白いところはコンビニチェーン間で差はあれど、セブンならセブン、ファミマならファミマ、ローソンならローソンという風にたいてい同じような匂いがするのだ。立地も建物もまるで違うコンビニなのに。ただあれは個人的に嗅ぎ続けていると気分が悪くなるのであまり好きではない。

ちなみに友達の家でやったのはプレイステーションクラッシュ・バンディクーだった。起動した後のヴィーンという当時5歳の自分を恐怖の淵に叩き込むサウンドロゴ、ロード時間の長さ、コントローラーのボタンの多さは今も記憶に刻まれている。

*1:あの匂いを忠実に再現した芳香剤があったら買うけど