猫も杓子も記事を書く

140文字ではかけないことをかこうと思います。

水曜日のダウンタウンが求める笑いとは

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先週の「水曜日のダウンタウン」の例のクロちゃんのくだりが某ブログを中心に結構な話題になっていたので、自分も録画してあったのを見ました。こういう時全録画テレビはあとからキャッチアップできるので助かる。皆さんも買いましょう。なおクロちゃん以外のパートは見ていません。そこ目的なので。

 

何で笑おうとするのか

結論から言って、自分にはそこまでげらげら笑える内容ではなかった。初見はほとんど笑えなくて、驚きとか悲しさのほうが強く、ワイプに映った千原せいじが真顔で言った「これあかんのちゃうん」のときの感情が自分に一番合っていたように思います。むしろあの状況を目の当たりにしながら淡々と家具を運び出す三四郎小宮の肝の強さ、リアクションの小奇麗さが逆に奇異に見えてそちらの方に笑いました。 
そのまま2回3回と見るうちにクロちゃんの行動が自分の脳内で処理できるようになってきたからなのか、泥酔した彼の引き起こす事象と映像効果(字幕とか、SEとか)が噛み合って、ベッドに潜るモンスタークロちゃんで笑えるようになりました。

あれでゲラゲラ笑う人と、引きしながら苦笑する人。スタジオで見てるタレントのなかでも反応が分かれてましたが、見てる対象が違うんだと思う。
その中でも松本人志は机をバンバン叩くぐらい笑いながらも女性タレントの「切ない」「かわいそう」「どうしたの」というリアクションにもきちんと相槌を打っていて、ああこの人はだから売れたんだなと今更理解しました。こと笑いに関して感性が鋭すぎる。いろんな人の笑いの引き出しを持ってるんですよきっと。

人間の本性が一番出る状況というのはどこなんでしょうか。あのVTRのように、泥酔したときに見られるのが本性だとするならば、あれは間違いなくピエロの仮面の内側を見てしまったような、言ってしまえば「見てはいけない物を見た」という感覚が近いのかもしれません。

しまいには目が覚めた後のクロちゃん。あの様を見てると絶対記憶ないですよね。あの所作が、泥酔した彼の奇行の数々の無意識さを裏付けているような気がして鳥肌が立ちました。

演技ではないかというコメントを見ましたが、自分にはどうしてもそうは見えませんでした。逆にどういう台本を書けばああいう行動を引き出せるのか知りたい。もし演技なのだとしたら自分は彼が似たような企画でいじられる限り、半永久的に騙され続けることになるでしょう。

常軌を逸した者同士の戦い

もう一つ、あの映像ってクロちゃんの自宅内はほとんどが定点カメラからの映像でしたよね。まあもちろん各所に許諾を得た上でやってるんでしょうけど、そんな経緯はパブリックにする必要はないわけで、それを抜きにして「部屋の中に取り付けられた複数のカメラによって自宅を映され、それを公共の電波に乗せられる」というのは、やっぱりやってることが常軌を逸してますよ。プライバシー云々とか、やめるべきとかそういうことではなくて、発想がぶっ飛んでるっていう話。
これはスタッフだけじゃなくてクロちゃんもそうです(し、同じことをされてる他の芸人さんもそう)。そこまでして笑いがほしいのか、どんな人参がぶら下がっていたらそこまで身を削ることができるんだという。自分と全く違う感性を持った人間に対する圧倒される、理解に苦しむ感じ、あれに似てます。しかもそれが自分も他の番組で知ってるような有名な芸人ばかりだからなおさら怖い。一体どんな関係性を持てばあんな映像が撮れるのか。

自分にとって壮絶なインパクトになったバラエティー番組というのがいくつかあって、キャラクターに扮した姿を見て笑う「笑う犬」や「めちゃイケ」や「はねトび」、単純にコントや漫才などのお笑いという芸能分野を鑑賞してで笑う「エンタの神様」や「オンエアバトル」、芸人やタレントなど人をテレビ的に転がされる様を見て笑う「しゃべくり」や「みなさんのおかげでした」などがあります。「水曜日のダウンタウン」は確かに面白いし笑える企画も多いのですがどのカテゴリにも属しているようで属していません。ハイブリッドと呼ぶのが正しいのでしょうか。

何はともあれ今回の映像はクロちゃん・番組双方からとてつもない衝撃を食らいました。こんなに期待と恐怖を抱えながら見る番組も世の中そうはないでしょう。自分の中で水曜日のダウンタウンに対する妙ちくりんなハードルがぐんぐん上がっていっているのがわかります。それを軽々超えるような映像を見せられるんでしょうね。すごいけどやっぱり怖いわ。