猫も杓子も記事を書く

140文字ではかけないことをかこうと思います。

某ライブイベントのガイドラインに見る、1/30000の外れた良識

anisama.tv

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こんなくだらないことがYahoo!のトピックになってしまった。

まあ言いたいことは分かるんですけどね、ヲタ芸やめろとか家虎やめろ咲クラやめろとか、とにかくライブと関係ないことすんなやと、そういうニュアンスで書かれた注意書きであることぐらいはね。とにかく言葉の選び方がまずかった*1がために、あたかも「コール全般」が禁止と取られかねないような曖昧なガイドラインになってしまったことが要因のような気がします。

 騒ぎ出したオタクに対してばっさり言い放つこの人が運営会社の社長という事実なんですよね。運営とオタクにはマリアナ海溝のごとく隔たりがありますよ。

こんな注意書きを書くようなスタンスなのだから、この期に及んで中途半端に謝罪されても面白くないし、出来る限りプロレスを繰り広げてほしいと思いますけども、さてどうなりますかね。

オタク同士の間に生まれる溝

ステージ上のアーティストに対して、真摯に応援したい、というファンからすれば変なコールは迷惑千万ですし、それすらも意味不明なものです。このようにガイドラインに組み込まれたことで少しは不快な思いをせずに済むと思っている人も多くいらっしゃるでしょう。
一方、「オタクは自分が盛り上がりたくてライブに行ってるのか?」という趣旨のツイートを見かけましたが、多分ほぼ正解です。勿論、演奏や歌、パフォーマンスを見せるタイプのアーティストもいますが、アイドル的な売り出し方をされているものについてはアーティストのパフォーマンスを見ながら盛り上がりたいというものがほとんどだと思います。

さらに言えば、「主催者側が独自に規制やルールを設けた結果」でもあると思っています。このイベントが発足して15年近く経つわけですが、その間にアニメ系のライブイベントにおけるルールやマナー、ファンの民度は大きく多様化したと言わざるを得ません。あるところは光り物全面禁止、あるところはボタン電池必須、などなど。某王国のように恐ろしいくらい統制が取れている現場もあります*2
これらが同じ会場にぎゅうぎゅうと集められて開かれるのがこのイベントです。価値観で対立がおきてもおかしくない。ファンとファンの間にも、場合によっては埋まることのない溝が生まれているというのが現状なのです。

 

本物の厄介は常識のものさしでは測れない

とはいえ、運営の今回の措置は突然のスーパーバインドではなく、度重なるヲタクの明らかに度を越した行為の産物によるものでもあります。

SNSのツイートレベルの信ぴょう性ではありますが、これまでも過去のイベントでは、頭に蜂蜜やキムチを被る、ライブ中に突然パンや牛丼を食べる、ある曲で前方に向かって突然駆け出すなどの奇行があって、その度にファンの民度が疑われるということが数年前から繰り返されてきて、そして去年はついに下記の通り、逮捕者が生まれる事態になりました*3。これを以ていよいよ対策に乗り出すことになったのだという推測は容易につきます。

 

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考えてみて下さい。あなたはどういう状況に身を置かれた時、「ライブ会場にこっそりゴキ○リを数十匹持ち込んでライブ中に撒く」という発想に至りますか?自分は30分くらい考えましたが、全く理解できませんでしたし、意味が分かりませんでした。

常人の発想で、そんな人はいないと思います。「ライブ中にゴブリを撒いてはいけません」というルールなんて設ける必要はないでしょう。なぜなら禁止するまでもなく、やるひとはいない(と、考えられている)からです。「ライブ中に牛丼を食べてはいけない」「ライブ中にキムチを頭から被ってはいけません」というルールがないのも、同じような理由でしょう。逆にそんなライブが(アニサマ以外に)あるなら教えて欲しい。

オタクがステージ上の演者からレスをもらいたい、認知してもらいたいという思いで突飛な行為に走るというのはありがちです。他の人より大袈裟にパフォーマンスしてみたり、MC中に叫んでみたりというのはその一環だと思います。気持ちは・・・わからんでもないです。まあ自分ではやろうと思いませんが。
これに対し、「ライブ中ゴキブ○を撒く」というのはそんなものではないと思います。同じオタクの立場からしても最初から最後まで意味が分かりません。「認知してもらいたいから○キブリを撒いた」のだとしたら、思考回路が捩じ切れているとしか思えません。どこを調べても犯行動機が書かれていないのがこの事件の一番恐ろしいところです。

 

自分もかつて、未知との遭遇をしたことがあります。
とある芸人さんが主催する、「アニワラ」というイベントでのことでした。オルスタのイベントで、様々な声優さんやアニソン歌手が入れ代わり立ち代わり、歌ったりコントしたりするイベントでした。

後ろからの強烈なモッシュに耐えながらお目当ての方々のパフォーマンスを見終えたぼくは、一旦激戦区から脱出するため、スペースのある後ろに下がってイベントを見ていました。

そして、忘れもしない、某黄色と緑の探偵服を身に纏った2人が、「ぎみぃみるきぃ」という歌を歌い始めたときでした。自分の真ん前に立ったオタクが、突然あるものを頭上に掲げ始めました。なんだろうとそちらに視線を移したぼくは、目を疑わざるをえませんでした。

彼が掲げたもの、それは、でした。

1ミリも意味が分かりませんでした。なぜ鯖なのか?自分が知らないだけで、実はミルキィホームズは鯖と縁があるアニメだったのか?それとも「光り物」と引っ掛けていたのか?そもそもどうやってこのオールスタンディングの会場に持ち込んだのか?

その歌の最中、彼はずっと、ぼくの真ん前で鯖を掲げ続けていました。ほんのりと鯖の生臭い臭いが鼻をつくようになり、全く理解が追いつけない中でステージに目を向けたとき、掲げられた鯖に対して、困惑の表情を浮かべる佐々木未来さんの顔を、自分は生涯忘れることはできないでしょう。

コールやヲタ芸は被害者なのか、加害者なのか

ここまでで、もし「先の逮捕案件があって、よりいっそうの取締強化に乗り出した」結果が冒頭のガイドラインなのだとしたら、コール・ヲタ芸が禁止になったのはそれ自身の害悪性というより、その先の犯罪まがいの行為のために網が広げられた結果、ついでに犠牲になったと解釈できなくもありません。
家虎を始めとしたコールなどに対する、某プロデューサーをはじめとしたバッシングは、今年のアニサマが終了して以降、急に聞こえるようになったような気がします。単に変な見方をしすぎなのだろうとは思いますが、ブラフだったのではないかという気がしてならないんですね。

勿論真意は文意にある通りだと思いますので、それ以上の詮索は無価値ですし、個人的な意見としては、過剰なコールやMIXがあろうがなかろうが、それによって害されたと思った認識はないのでどちらでもよいというスタンスなのですが、このガイドラインそのものについて釈然としない原因はそこにあります。

ただはっきりしていることは、本物の厄介は

  • 「自分たち*4のモラル・尺度では通用しないことをしようとしてくる」ということ
  • 「どういう方向性であれ、ルールの網を掻い潜ってグレーな行為をとろうとする」こと

だろうと思います。それは勿論当事者である運営側が一番良く知っているはずです。だからこういうふうに全方位的に沈静化できるようなガイドラインを立てようとなったんでしょうね。この試みがどう転ぶかは終わってみないと分かりませんが。

このイベントに参加して今年でかれこれ10年目になりますが、幸いにも、自分の周りでこういった奇行に走るオタクに遭遇したことはありません。おそらく今年もまた、オタクは悪知恵を凝らして挑んでくるでしょう。各アーティストのパフォーマンスと共に、そちらも注目してみたいと思います。そしてできれば、自分と関係ないところでやってほしいなと願うばかりです。

*1:「咲きクラップ、MIX、コールなど、いわゆるオタ芸と称される応援行為」という、把握してるんだかしてないんだかよくわからない十把一絡げ感とか

*2:自分がすきな茅原実里さんの現場では、オルスタ会場でファンが光り物を振っていましたが、これもある意味ファンの多大な理解によって成立しているものだと思います。一歩間違えば危ない

*3:Twitterのフォロワーさんも被害を受けている旨のツイートをしていて、これはいよいよ深刻だぞと思ったのを覚えています

*4:運営者やアーティスト、一般の参加者