猫も杓子も記事を書く

140文字ではかけないことをかこうと思います。

伏線

この前スーツを買いに行った。職場はずっと私服で、スーツを着るような機会など冠婚葬祭か、深刻な障害を出した顧客に謝りに行くときか、のどちらかぐらいのものだが、今持っているスーツがずっと前に買ったもので、もう体型的に入らないことは火を見るよりも明らかだったので、直截的な言い方をすれば、次に誰かが死んだり結婚したりするときまでに今の自分の体型でも何とか着れるスーツを設えておく必要があった。

幸い(とはいえ同年代の平均よりは遥かに少ないと思われるが)あくせく働いて得た貯金も多少はあるので、その方面の知識が全くない自分でも思いつくようなところ*1ではなく、それより少しはいいところで買おうという気持ちがあり、最終的に某店のパターンオーダースーツを買おうということで落ち着いた。

当日はショーケースに所狭しとならんだ生地の中からスーツに使うものを選ぶところから始まる。接客してくれた店員さんに言われるがまま、冠婚葬祭用として着られ、かつある程度物持ちよくというぼんやりとしたリクエストにも、キビキビとお薦めしてもらった生地の中から適当に選び、その後採寸しながらベースになるジャケット・パンツを決め、細かいサイズを調整していく。

ジャケットの袖周りの採寸に入ったとき、店員さんが「左右ですこし差がありますね」と言った。見ると、左右同じ袖の長さであるにも関わらず、右手のほうが2 ~ 3センチほど短くなっている。一般的に、スーツの袖は親指の付け根が見えるぐらいが丁度いい袖の長さだそうなのだが、それよりも上が見えてしまっている状態だった。店員さんは「丁度いい袖の長さに調節するため、左右で微妙に長さを変えられますが、いかがしますか?」と聞いてきたが、まあ5センチ10センチ違うならまだしも、よほど注意してみないとわからないような細部に拘泥してもしょうがないなという気持ちもあり、そのままにしておいた。その時は体型的な問題なのかなーぐらいにしか捉えていなかった、と思う。

 

数日後、会社でダンボールに入った書籍の運搬をしていたときのことだ。腰をかがめてダンボールを持ちあげようとしたその時、背中を稲妻にでも打たれたかのような激烈な痛みが襲った。職場だったので「ギャン!」と怯えた犬が吠えるような声を一度上げるだけで留まったが、家だったら人生で今までにないほど叫び、床をもんどり打っていたかもしれないと思うような痛みだった。

取り敢えず湿布だけ貼って急場をしのぎ、次の日仕事が始まる前に整骨院に行って見てもらうことにした。症状的にぎっくり腰のような気がするなあと思ってはいたが、自分の身体を見てくださった先生は開口一番「ぎっくり腰ですね」と言った。こんなに当たって嬉しくない予想はソフトバンクホークスの優勝予想かぎっくり腰ぐらいのものだろう。

様々身体を見てもらい、姿勢の写真も撮ってもらったが、なんと骨盤が歪んでいるあまり、肩の高さや腰の高さが脊椎を挟んで左右で微妙に違うということがわかった。日頃からの癖や脳に刷り込まれた動きがその左右差を生み、結果として歪みになり、ストレスを与えていたということだった。

マッサージや電気鍼などを受けながら考えていたことは、先日のスーツの一件だった。袖周りの左右差はなんのことはない、骨盤が歪んでいることによる左右の差によるものだったのだ。まさかあれが伏線で、それも張られてすぐに活きてくる(全く活きていない)とは思いもしなかったが、ともあれとても不思議な体験だった。とりあえず数ヶ月かけて骨盤を直します。

*1:○山、A○KI、スー○カン○ニーなど・・・