猫も杓子も記事を書く

140文字ではかけないことをかこうと思います。

知らないうちに幻影を追って

ここでしばらく書かずにいる間に、ベイスターズセントラル・リーグペナントレースで2位という堂々たる位置を勝ち取り、クライマックスシリーズ・ファーストステージで阪神タイガースに敗れ、今シーズンの戦いは終わった。正直、ドラフト以外での昨季からの戦力補強中井大介(と、追加補強になるはずだったソリス)だけという中*1で、好成績を期待する方が難しいのでは、という開幕前の自分の心境をいい形で裏切ってくれたのは嬉しかった。

とはいえ、2位と言っても勝ち越しはたったの2である。例年の負け越しが70あまりまで嵩んでいる交流戦で、死ぬほど頑張って得た貯金3がまさか最終盤の順位決定に生きてくる、マジモンの伏線になろうとは、誰も思わなかっただろう。大方の予想を覆し、連勝に次ぐ連勝で最後に3位に滑り込んできた阪神との勝ち越しの差は、たったの1しかなかった。いかに大補強した巨人以外のチームに戦力差がないかという好意的な解釈もできなくはないが・・・

 

かくして、貯金差で1しかなく、かつシーズン通して相性が悪かった阪神とのクライマックスシリーズ・ファーストステージは、ある意味予想以上に熾烈を極めた。継投の縺れがあったとはいえ、6点差をひっくり返されたり、9回2アウトまでこぎつけたと思ったら福留にスパコーンと一発をかまされたり、どちらがホームなのか分からないくらいにがっぷり四つで組み合っていた。

もどかしかったは、初戦と2戦目はベイスターズとしては思惑通りの試合展開にはできていた、という点だ。阪神の強みはセリーグ屈指のリリーフ陣の強さで、PJが離脱したとはいえ、岩崎、島本、ドリス、ノウミサン、藤川球児というラインナップで、下手したら6回以降は継投で勝ちに持っていけるだけの層の厚さを誇る。この終盤の安定感に対抗するためには、早いイニングで得点をあげて主導権を握り、勝ち継投の出番になるような展開を避けるのが理想と言えるだろうが、ベイスターズはこの2試合、筒香のHRにロペスのHRと両試合とも先制できているのだ。ベイスターズの攻撃面でのシナリオはある意味成功しているといってよかったと思う。

誤算だったのはベイスターズのリリーフ陣で、やはりシーズンでも多くの試合を託してきただけに、シーズンと同じかそれ以上のパフォーマンスを発揮するのはやはり難しかったのかもしれない。今季のベイスターズ、先発で規定投球回を達成したのは今永だけで、長いイニングを計算できる先発がそもそも少ないというのもあった。それもあってラミレス監督は、今永や先発で2番目に投げた上茶谷をリリーフに回し、先発に短いイニングを任せつつリリーフの手札を増やして総力戦という形でリードを守り切るという青写真を描いていたのだと思う。*2しかし、リリーフの精度という意味で得意にしている阪神のお株を奪うことはできず、横浜に6連勝で乗り込んできた阪神を凌ぎ切ることはついにできなかった。

 

振り返ると、楽しさより苦しさが勝るようなシーズンだった。ラミレス政権も4年目に入り、求められるハードルはより高くなる。この3年間でCSも日本シリーズも経験した。ないのは優勝、日本一だけだ。前年Bクラスに終わった雪辱を、借りを返そうと、選手たちは誰よりも燃えていただろうと思う。球団もウイング席を増設したり、年間通して70周年へのPRをしたりと、莫大な投資をしてハマスタを、ベイスターズをより良くしようとしている、その力の入れよう、期待の大きさは傍らの1ファンであっても理解できた。

その期待に応えられるだけの結果だったか?と考えると、YESともNOとも言えない。自分の期待値からすると、優勝争いができるほど切迫した戦いを見られるのはまさに望外だった。来季に期待の持てる結果だった。

それでもハマスタで胴上げを許し、CSも下剋上を許した。最後の最後まで阪神に抗いきれないままだった。そのことが、2位という数字上の成績以上に澱のようにのしかかっているように思える。

 

一時だけ強くあることと、強くあり続けることは全く別物なのだということに、自分は今季初めて気がついた。失うものがなにもないほど弱かったチームが、躍進や下剋上に熱狂する時代はとっくに終わっていたのだ。失うものを持って初めて、負ける怖さ、順位を下げる怖さ、あのときのような熱狂、歓喜がもう戻ってこないかもしれないという怖さと、向き合うときがやってくるのだと。

2016年のCSファーストステージ、2017年のホームラン3連発に端を発する3試合連続サヨナラ、CSファイナルステージでの優勝、1998年の優勝・日本一・・・気がつくと自分のスマートフォンにはあの時の動画が、熱狂が映し出されていた。過去の栄光は甘美だが、時に麻薬にもなる。負ける怖さから逃れるために。自分はそこに、シーズンの最後まで気がつくことができなかった。

 

横浜DeNAベイスターズという球団は、今だけ強くあることだけに飽きたる球団ではないと思っている。来年も再来年もその先も優勝を目指し、日本一を勝ち取るために戦い、それを達成できるためのチームを作っていくのだろう。それを一切の衒いなく標榜するためには、失うものを抱えての戦いに挑み続けなければならない。それはチームの選手・監督・コーチ・スタッフ・フロントが一番良くわかっていることだと思う。この中に、一人のベイスターズファンとして、自分も加わらなければならないのかもしれない。これからベイスターズが挑む戦いは、そういう戦いなのだという、覚悟を。

 

来シーズンは、きっと長くなると思う。その先に、光が待っていると信じて。

*1:他方、何億もかけて○や銀仁朗を集めた球団もあったから、尚の事というのもあった

*2:今永は2017年のCSで同じくリリーフに回って好投していたので、その実績も買っていた部分はあっただろう