猫も杓子も記事を書く

140文字ではかけないことをかこうと思います。

「POP VIRUS」の現在地

スマートフォンで「POP VIRUS」を聴きながら新幹線で名古屋へ向かう僕に今なら声をかけてあげられると思います。このアルバムのタイトルに彼がどんな意味を、どんな決意を込めたのか、ライブがもうすぐ始まる今だからこそ、改めて考える意義があると。

星野源が前作「YELLOW DANCER」で掲げた「イエローミュージック」のその後に、続けてリリースした、「恋」「ドラえもん」「アイデア」という曲たち。彼らはドラマ、国民的アニメ、連続テレビ小説というそれぞれ異なる場所でスポットライトを浴び、大衆音楽の中で間違いなく躍動していました。彼が一昨年の末から去年にかけて、日本の音楽シーンの表舞台に立ち続けたアーティストの一人であることは疑いようがないでしょう。そして彼の音楽はこの「POP VIRUS」の名の通り、「POPS」というもう一つ先の次元にたどり着かんとしている、まさに今がその時なのです。

 

ドームツアーというのは決して珍しいものではないと思います。もちろん、限られたアーティストのみたどり着ける世界だと思いますが、その陣容はアイドルからロックバンド、K-POPまで、多様です。そういう中で、新たな「POPS」の担い手として、彼がどんな音楽を披露し、繋いでいくのか。それを知りたくて、ナゴヤドームにライブを見に行きました。

 

率直に言います。最高だった。

ステージ上にいたのは、楽しそうに歌うボーカルと、楽しそうに演奏するバンドメンバー、楽しそうに踊るダンサーたち。彼ら彼女らが綺羅びやかな舞台演出や照明効果に各々のパフォーマンスを乗せて、エンターテイメントとして昇華する。ただそれだけ。ただそれだけなのですが、それでいて清らかで、そこに一切の迷いや淀みがない。このエンターテイメントがステージの外に届いている、受け入れられている、という信念、自信がそこにあったんじゃないかなと思います。

 

彼がライブ中のMCで「ドームに包まれている感じ」と表現していましたが、それは彼の「イエローミュージック」もとい「POPS」を観客が最上でもって受け止め、応え、歌い踊る観客の存在があったからです。曲のたびに、手拍子をしたり、体を動かしたり、踊ったり。ライブ会場であれば当たり前のことかもしれませんが、アーティストがやりたい音楽を演奏し、オーディエンスがそれを受容し感情の波を起こす、というのは一つの多幸感のかたちでしょう。会場にいたひとりひとりへ、まさに「VIRUS」のごとく、彼の「POPS」がドーム中に伝播していた光景だったからこそだと言えます。

 

このツアーでのべ30万人以上の耳目に、星野源の音楽が触れることになりますが、この「感染」の波は、これからツアーが終わったあとも、なお広がっていくのでしょう。自分が楽しいと思う音楽、自分が好きだと思う音楽。それを「POPS」という肩書に乗せて広げていくという決意と覚悟。アーティストとしての究極だと思いますし、容易なものではないと思いますが、それらを断片的に感じることができた「POP VIRUS」という盤であり、今回のライブだったのかなと思います。

どんどん進化を続けていくであろう彼の「POPS」にこれからも触れられること、今回その目撃者となれたこと、これがどれほど幸福なことか。至上の一言です。

 

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