猫も杓子も記事を書く

140文字ではかけないことをかこうと思います。

遅ればせながらのプレミア12感想 〜守護神の不在について〜

恐らく、

「第一回プレミア12の優勝国はどーこだ!?」

と街中で聞いたら、正解率はちょっと悲惨なことになるのでは、

と感じてしまった今大会の話です。

(日本以外の出場国の動向にちょっと興味なさすぎよね・・・)

 

まあ、今回の侍ジャパンは、あのGG○○というスラングの由来となった、

北京オリンピック以来のセンセーショナルな大会だったと思います。

もちろん悪い意味でね。

なにせ、世界ランキング1位にして優勝候補筆頭。メジャーも注目する、日本プロ野球界の中心選手をわんさか集めて臨んだ大会だったわけです。

予選では、何度か危ない場面もありましたが、それでも残り1試合を残して決勝Tに駒を進めるなど、試合運びとしては上々でした。

ただひとつ、中継ぎ陣の明らかな異変を除いては。

 

今大会の則本は、明らかにシーズン中からまた一段ギアを上げてきている、というのが如実にわかるパフォーマンスでした。強化試合でとはいえ、自己最速の球速をマークするくらいですから、相当な気合の入りようだと、パ・リーグに明るくない自分も思いましたし、パ・リーグ球団のファン、とりわけ楽天ファンの方々からすると尚更だったのではないかと思います。

ある種、短いイニングでの起用、という条件がそうさせたのだろうとは思いますが、見ている側の期待をいい意味で裏切るピッチングだったのは事実だろうと。

だから、小久保監督、及びコーチ陣が起用したがるというのも無理からぬ話ですし、強化試合での好投を受け、大会中も、おそらくは8回、セットアップマンとしての期待をかけたのだろうと解釈しています。

問題は9回でした。

初戦の韓国戦で松井裕樹が劇場を披露。この時はまだ無失点に抑えたからよいものの、続くメキシコ戦では澤村拓一が同点に追いつかれ、ベネズエラ戦では松井が逆転され、セーブ失敗。

いずれもその裏にサヨナラ勝ちしていたからよかったものの、延長に入ればノーアウト1塁2塁から始まるタイブレークのルールを採っているプレミア12において、結果が変わっていてもおかしくなかった試合ではありました。

また、準々決勝のプエルトリコ戦では、大差の場面ながら増井浩俊本塁打を被弾、という場面もありました。本大会中、9回を3者凡退で抑えたのは予選のアメリカ戦の澤村だけです。

侍ジャパンは常に、最後を信頼して託せる守護神が不在という中で戦っていました。

ですから、準決勝の韓国戦、9回も則本、という選択肢は十分考えられる範疇の采配だったと思います。最後を任せられる人がいないのであれば、8回を3人で抑えてみせた彼に期待をかけたくなるのは道理です。

(山崎康晃や牧田和久がいただろうという意見を準決勝敗退後に何度か見ましたが、リード時の中継ぎとして大会中起用してきた選手を、負ければ即敗退の準決勝、日韓戦のセーブシチュエーションで起用するには荷が重いという判断だったのかもしれません。首脳陣がどう考えていたのかは知る由もありませんが)

確かなのは、8回のように9回も則本がすいすいと抑えてくれるだろう、という首脳陣の期待があったこと(テレビ観戦していた自分も、則本がこのまま抑えると思っていました)でしょう。そして連打と死球でノーアウト満塁という局面となり、小久保監督が松井に交代、という決断をすると。

これについては、則本が今大会の色々な場面で好投を続けてきたがゆえに交代の決断を鈍らせたと考えます。どこまでなら彼が立ち直って抑えてくれるか、その判断を延ばしてしまったのでしょう。

その意味で、あの死球が両チームの明暗を分けたと言っても過言ではないと、自分は思います。誤審かどうかはさておき、あの場面で8回同様のパフォーマンスが出せれば、三振なりゲッツーなり、ピンチを切り抜けられるだけの結果が得られたかもしれない。勿論、安打で得点を献上するというリスクは有りましたが、あの時点では無失点だったわけで、まだ、則本に望みを託すことができた。

その機会が、死球で一瞬にして潰えたと。インコースをずばずば突く、強気のピッチングが持ち味の則本からすると、あまりにもダメージのでかいものだったと思いますし、ここで交代させたのは、傷口を最小限に留めるギリギリのラインだったとみるべきでしょう。

(誤解されるかもしれませんが、大会中、則本がこれ以上ないピッチングで侍ジャパンを支えてくれたのは紛れもない事実ですし、そこは正しく評価しないといけません。あくまで起用、交代判断の問題です)

 

金賢洙に対して松井裕樹という起用は、対左という状況での起用だったのだとしたら悪手だった(少なくとも好手ではなかった)と言わざるをえません。相手が基本的にどちらも苦にしないタイプの打者だった*1というのもありますし、

そうでなくとも、この大会で3人をすんなりと抑えた経験のないまだ20歳の左腕にとって、この場面での起用は重荷だったでしょう。テレビ越しでもわかるほど、彼の顔は引き攣っていました。

ではあの場面、誰に代えればよかったのか?自分には、明確な解がありません。自分がベイスターズの一員として応援している、山崎康晃も守護神とはいえ、23歳のルーキーです。強心臓ではありますが、あの場面をぽん、とは託せません。可能性を感じるのは澤村、牧田、小川あたりでしょうか。

ただ、大谷、則本と速球派右腕の似たタイプの継投が続いていたので、澤村のようなぐいぐい押していくタイプのピッチャーはしんどい。フォームも大きく変化がありません。増井も同様ですし、何より李大浩に回ってくる場面で対戦経験が他より多いピッチャーを出したくはないでしょう。(あのあと増井が出てきたわけですが・・・)

小川や牧田は同じ右腕ですが、フォームが特徴的で大きく異なるため、相手打線を惑わすことができていたかもしれません。ただ、どちらも9回が本職のピッチャーではありません。

前田をリリーフで、という可能性もなくはないでしょうが、彼もスターターですし、中二日での起用はギャンブルです。3決でのピッチングを見る限りでは、武田翔太というワイルドカードもあったかもしれませんが、メキシコ戦を見るだに一分のミスも許されない中でのパフォーマンスを、となると優先順位は下がります。

報道通り、菅野を決勝で投げさせようと考えていたなら出せませんし、西や、もう一人の左腕であるところの大野はいずれも思うような結果を残せていない、などなど。

 

今更になって、「招集選手がー」というつもりはありません。左腕が2人しかいなかったことは気がかりでしたが。

今大会について、留意すべき点があるとするならば、

  1. 大会中、松井が自身のコンディションを回復できる機会がなかったこと
  2. 則本の登板機会が突出して多かったこと
  3. 上記に関して誰も指摘・改善できる環境になかった(?)こと

要は起用の柔軟性です。あれだけ9回のスペシャリスト(松井、山﨑、澤村、増井)を持ってきているのですから、大会中も状況に応じて誰を起用するか、であっただろうと。

守護神を固定したい、という首脳陣の考えはあったのでしょうが、もし、松井に侍ジャパンの最後を任せるという意志が確固たるものなのであれば、もっとプレッシャーのかからない場面、アメリカ戦の終盤のような大量リードの場面で一度松井を投げさせることができていれば、彼のピッチングは変わったのだろうかという気はしています。あのまま何があっても9回を任せ続ける、というのは、国際大会の敗戦リスクと天秤にかけたら、不釣り合いな信頼であったことは自明です。

また、投手間で登板数に偏りがあったことも考慮する必要があります。国際大会は数年に1,2度という頻度で、侍ジャパンが招集される機会は決して多くありません。今大会、年齢的に若いメンバーを選出している以上、登板数が偏れば今大会だけでなく、次回以降の大会の彼等を考えても経験という意味でマイナスです。

かといって登板数が多ければいいという問題でもないのがもどかしいところです。怪我や疲労の蓄積というリスクもあるでしょうし。

もし、則本を本当にセットアッパーとして起用することを想定していたのであれば、疑問符がつく場面での登板もありました。予選の戦い方を見ていると、「彼に任せておけば問題ないだろう」という、ある種便利屋としての起用の思惑があったのではないかと推測します。

3に関してはもう、完全な邪推です。僅かなミスが命取りになる国際大会ですから、誰かアドバイスできる人がいなかったのだろうかと勘繰ってしまいます。個人的には継投も戦術だと思いますので、相手に先読みされるようなワンパターン起用はどうなのでしょう。もっとも、則本の投球がそんな疑念を払拭するようなピッチングだったことは事実ですし、我々素人が考えるような手は打った上で、だとは思うのですが。

 

大会の価値に大小はありませんが、国際大会はこれで終わったわけではないので、次の大会に向けて、今回の失敗は糧として欲しいと強く思います。指揮をとった小久保監督本人も痛いほど分かっているでしょうからね。

 

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そして、誰が今後の侍ジャパンの守護神を務めることになるのか、今から非常に興味があります。

*1: http://eng.koreabaseball.com/Teams/PlayerInfoHitter/SituationsPitcher.aspx?pcode=76290 より。左右どちらの投手からも同じくらいの成績を残しています